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こどもの前歯がかみ合わせない? - オープンバイト(開咬)とは –
今回は、子どもの歯ならびの中でも、特にオープンバイト(開咬=かいこう)についてお話ししたいと思います。
オープンバイトとは
オープンバイトは、前歯もしくは奥歯が数本にわたってかみ合わない状態のことを言います。
前回のブログでお話ししたように、大人の方からも、
『昔は前歯で咬めていたのに、最近咬めなくなってきた。』
といったご相談を頂くことがあります。
大人の方の、このようなかみ合わせの変化の代表的な原因としては
- 顎関節症
- 顎関節の感染
- 顎関節の腫瘍(良性、悪性)などのできもの
- 交通事故などの外傷の後に起こる骨の変形
- 虫歯や歯周病など顎関節以外に原因がある場合
など、多岐にわたります。(詳細はこちら)
今回はお子さまのオープンバイトについてお話ししたいと思います。
お子さまのオープンバイト
保育園検診や、診療所では、奥歯よりも前歯のオープンバイトに多く遭遇します。
つまり、上下の奥歯で咬んだときに、上下の前歯がぶつからず、隙間があいた状態になります。
前歯でものが咬めない、咬みきれない状態であることが想像できると思います。
また、食事への影響だけでなく、成長とともに顔貌の変化や心理面への影響が生じることもあります。
オープンバイトの原因は?
それではなぜ、おこさまのオープンバイトが起こるのでしょうか?
その原因の代表的なものが以下です。
- 遺伝
- 生まれつきの歯ならび、骨格
- 指しゃぶりをしている/していた
- 口呼吸がある
- 舌の動かし方のクセ(特に飲み込みのとき)
- 舌小帯の付き方
- こどもの歯の早期喪失や先天的な欠損
- 咬む力がよわい
指しゃぶりについて
指しゃぶりをしているお子さまの歯ならびが、必ずしも悪くなるわけではありませんが、
オープンバイトのお子さまの中には指しゃぶりをしている/していた子が多い印象にあります。
保育園の検診などでも2,3歳頃にオープンバイトになっている子が一定の割合でいらっしゃいます。
指しゃぶりは3歳頃までに減少していくことが多く、保育園検診で毎年経過を追いかけていくと、指しゃぶりをしなくなると自然にオープンバイトが改善していくことが多くあります。
逆に指しゃぶりを長くしていると、オープンバイトが残ったり、悪化したりすることもあります。
また、前歯にできた隙間に舌を入れるようなクセがついていくことがあります。
指しゃぶりはお子さまの生理的な動作と考えられており、不安や緊張を改善する効果があります。
そのため、無理にやめさせることは心理的な影響や、他の新たなクセを生み出すきっかけになることもあるため、年齢や程度に応じた慎重な対応が必要になります。
口呼吸がある場合や舌小帯の付き方が短い場合、乳歯の特に前歯の早期喪失や先天欠損がある場合などでは、飲み込みの時に舌を前に出すクセ(異常嚥下癖=いじょうえんげへき)がつくことがあり、舌が上下の前歯を押してしまうことで、歯が動いていきます。
オープンバイトの注意点として、上記のような様々なクセがある状態が長期化すると、小学生頃に歯の問題だけではなく、骨格 (アゴの骨の成長方向) の問題に移行していくことがあります。
また、咬む力が弱いために奥歯が伸びてきて前歯で咬めない状態になることもあります。
オープンバイトの治療法は?
3歳を過ぎた就学時前のお子さまは、指しゃぶりなどの影響が強いようであれば、徐々に減らしていくことや、ご自宅でできるトレーニングなどで改善を試みます。
それでも難しい場合は、矯正治療を検討します。
乳歯を早期で喪失してしまってオープンバイトが生じている場合は、子ども用の入れ歯のような装置などを使うことで、改善する場合があります。
舌小帯の付き方が強い場合は、舌小帯の切除などを検討します。
↓舌小帯(舌の裏のすじ)が強い状態
↓舌小帯の治療後の状態
口呼吸やそれに伴うお口の周りの筋肉の低下が起きている場合は、舌の位置や動かし方、お口の周りの筋肉のトレーニングを行います。
このように、原因に対して対応や治療を行います。
小学生になると、習慣になった舌のクセなどを除去することが難しくなっていきます。
また、歯の問題だけでなく、骨格の問題に移行する場合は、より治療が難しくなります。
クセの除去や、トレーニング、矯正治療などで改善を試みます。
中学生以降や、おとなの方も、治療を行うことは可能です。
原則的に治療方法は小学生と同様です。
しかし、クセが長期化しているため、除去しきれない場合は、治療期間が長引いたり、治療後の後戻りが起きやすいです。
一方で、近年ではオープンバイトの矯正治療に歯科用アンカースクリューという小さなネジを用いることで、治療効率が飛躍的に上がっています。
まとめ
お子さまのオープンバイト(開咬)の治療は、お子さまの成長や心理面に配慮しながら、十分な経過観察と、適切な時期に治療の介入をしていくことが重要で、クセが関わっている場合は特にそう言えます。お困りの方はぜひご相談ください。
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