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『朝起きたときに顎が痛い』、『朝起きたら口が大きく開かない』
顎関節症がどんな疾患で、どのような治療方法があるのか、これまでブログでお話してきました。
顎関節症の治療 -専門医による顎関節症治療-のブログはこちら
『朝起きた時に顎が痛い。』、『朝起きたら口が開かなくなっていた。』
顎関節症は、
①アゴやアゴの周りの筋肉の痛み
②アゴを動かした時に鳴る音
③口が大きく開かない、開きにくいなどのアゴの動きの不具合
などが、主な症状になります。
アゴの不具合に関して、特にご相談を受けることが多いのは、
『朝起きた時に顎が痛い。』、『朝起きたら口が開かなくなっていた。』といった症状です。
顎関節症の典型的な経過としては、『それまで口を開け閉めしたり、左右に顎を動かした時に、カクンなどと音がしていたのが、朝起きたら音が消えていて、口が大きく開かなくなっていた』といったものです。
この場合は、関節円板と呼ばれるアゴの関節の中にあるクッションのような柔らかい組織が寝ている間にズレてしまい、アゴを動かそうとした時に、邪魔をしていることが多いです。
起床時にこのような症状が出る原因として、睡眠中の姿勢や、歯ぎしり、食いしばりなどの無意識のクセ、枕の高さが合っていないなど、様々なことが考えられます。
これまでの症状の経緯や、現在の症状、状態を確認し、必要があればエックス線写真などの画像検査をして、診断をします。
これまでのブログに書いたように、顎関節症はまず診断が大切で、似たような症状を示す多くの病気との鑑別を行わなくてはなりません。
口が大きく開かない原因が顎関節症で、関節円板がずれてしまった状態(この場合、非復位性顎関節円板障害といいます)と診断した場合には、基本的には、かみ合わせの治療や、外科手術などの身体への侵襲が大きい治療ではなく、鎮痛薬の服用やアゴのストレッチ、ずれてしまった関節円板の正しい位置への整復などを始めとした保存的な治療を始めていきます。
ほとんどの方は、保存的な治療で十分改善します。
次の項で非復位性顎関節円板障害についての詳細をご説明します。
クッションのずれ、ひっかかり -顎関節症(非復位性顎関節円板障害)とは-
下のイラストの、左が口を閉じているときで、右が口を大きく開けたときです。
これは顎関節に問題がなく、大きく口を開けることができる状態です(健康な状態)。
この時、アゴの関節の中では、以下のような動きが起きています。
↓↓ 左の図が口を閉じているときです。アゴの骨の上に黄色いクッション(関節円板)がのっていることがわかります。
↓↓ 右の図は、大きく口を開けたときです。アゴの骨が矢印の方向に動くとともに、黄色いクッションも動いていることがわかります。このクッションがあるおかげで骨同士がぶつかることなく、スムーズな動きを行うことができます。
一方、顎関節症(非復位性顎関節円板障害)の図を下に示します。
黄色いクッションの位置がずれて、下アゴが矢印の方向に動くことを邪魔しています。
治療によりクッションを元の位置に戻せる場合もありますが、戻らない場合もあります。
元の位置に戻らなくても、治療によりアゴの痛みや、動きは改善可能なことがほとんどです。
しばらく何もせずに様子を見ているだけでも改善する場合もありますが、患者さん自身が改善したと感じていても、実際には大きく口を開けると痛みがあり、発症前の健康な状態までは改善しておらず、普段は痛みのない範囲でだけ顎を動かしている、ということが少なくありません。
そのため、しっかりと治しきることが大切です。