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院長ブログ 痛みや慢性疼痛、舌の痛みなどについて
目次
痛みとは何か?
人が普段経験している多くの痛みは警戒信号としての役割があります。例えば、進行した虫歯があるのに痛みを感じなかったら、放置して骨髄炎まで進んでしまうこともあるでしょう。これは、胃痛などでも同様です。痛みは嫌なことばかりではなく、生命維持に大切な役割を果たしているのです。
しかし、抜歯してキズが治った後も3か月以上続く痛みや、また、複数の医療機関で検査を受けても原因がわからないもの、また、繰り返し治療を受けても改善しない痛みがあります。こうした痛みは、警戒信号としての役割が無く、「痛みそのものが病気」であると考えられています。これは慢性疼痛と呼ばれ身体中のどこでも起こります。
痛みは、大きく分けると次の三つがあります。
- からだの様々な部位のケガや細菌感染による炎症などで起こる痛み
- 神経痛や神経の損傷で起こる痛み
- 1や2がないのに起こる痛みです。
1と2の痛みは原因がかなり分かっており、また、その対応も明らかになって来ました。しかし、3はまだ原因が明らかにされておらず、難治性です。
3について、分かっている事を述べます。これは、「脳の中で生じる痛み」とされています。即ち、外部からの痛み刺激(外傷、炎症、熱、化学物質など)がなく、または、神経の病気やケガがなくて起こります。これまでは、こころの痛み(心因性疼痛)とされて来ましたが、現在は、「脳の中の痛みを統合する領域の誤作動」と考えられています。この誤作動の原因の一つに、心理社会的ストレスがあります。これは、不安や憂うつなどの心理的な問題や日常生活での不快な出来事などによるものです。また、過去の辛い体験や性格などが関係している場合もあります。
現在、残念ながらこうした難治性で慢性化した痛みは、完全には治す方法がありません。しかし、認知行動療法などの心理社会的アプローチや、薬物療法、また、運動療法などで症状を緩和したり、生活の質を上げる事が可能です。そして、必要があれば多職種の医療連携や協働を行う事になります。
状態別の痛みの薬の使い方
医療機関では、患者さんの痛みを上記の三つの中で判断して、もし、薬を使う場合は、1では、抗炎症鎮痛薬(ロキソニンやボルタレンなど)を用います。また、2では神経障害性疼痛治療薬(リリカなど)を選択します。そして、3に対しては、抗うつ薬(三環系抗うつ薬など)を用いる場合があります。
慢性の痛みにも効果のある自分で出来るリラクセーション
腹式呼吸法
- お腹に両手を軽く当てる
- 口から息をゆっくり吐きながら、お腹をへこませる
- 鼻からいっきに息を吸い込みながら、お腹を膨らませる
以上を3~5回繰り返す
ストレッチと運動
- 口腔顔面部:パタカラ体操、あいうべ体操、開閉口運動、咀嚼筋負荷運動。オーラルフレイルや顎関節症に対しても有効
- 全身:腕を伸ばす・肩を緩める・背中と胸を伸ばす・足を緩める。漸進的筋弛緩法(文部科学省の心のケアを参照して下さい。)
ウォーキング
- 身体が気持ちいいと感じる程度の負荷で無理をしない
- ウォーキング中は出来るだけ何も考えない
- 継続する
快眠のすすめ
- 寝る前にお酒やお茶(カフェイン入り)を飲まない
- 寝る前に軽い体操やウォーキングをする
- 枕の高さや硬さは頭や首に合ったものを選ぶ
- 敷布団は硬すぎず、また、柔らか過ぎず、お尻が少ししずむ程度のものを選ぶ
- 部屋を暗くする
ご自身に合ったリラクセーション法を見つけることが大切
音楽を聞く、ビデオを見る、犬や猫などのペットと遊ぶ、プランターで植物を育てる、友人とのおしゃべりや食事をする、何もしないで頭を空っぽにするなど、ご自分に合ったものを探して下さい。
★当院では原因がはっきりしない、また、治療を受けても改善しない辛く長引く痛みに対して専門医が対応しています。
院長、副院長の慢性疼痛や舌の痛み、顎関節症の著書はこちら。